KISS

 2007年11月21日発売。シングル5枚を含む、全12曲。
 ジャケットはiPodを意識してそうな、シルエット風の驚くほどポップなもので、tetsu曰く「『デトロイト・メタル・シティ』の相川由利ちゃんが好きそうな感じ」。初回盤は歌詞カードが23面の蛇腹仕様で、開くとシルエット同士がキスしてるように見える。
 L'Anniversary Live以降に演奏された新曲のうち、『SHINE』『Bye Bye』の2曲は収録されなかった。

 統一感のある前作『AWAKE』とは違い、バラエティに富んだ楽曲の集まり。これもまた、ラルクの一面である。そしてken、tetsu、yukihiroの3人が、1つのアルバムの中で全員詞を書いたのは初めて。
 またhydeのコメント「リハーサルからきちんとやるようになった」「今、歌が面白い」など聞かされた先入観もあるのかもしれないが、ボーカルが難しいと思う。あと、測ったわけではないが歌ってる時間がいつもより多い(=イントロ、ギターソロが短い)感じを受ける。

 舞台とかミュージカルの劇場感を思い起こさせるアルバムで、最後『Hurry Xmas』のイントロが来た瞬間に、大団円のフィナーレを迎えた気持ちになれる。あー、見た見た、よかったよかった、みたいな。
 ラルクのアルバムは、七色の中でも絞った色を突き詰めるタイプのアルバムと、七色全部見せ付けるタイプのアルバムがあるが、本作は後者で、グレードアップした『SMILE』と言った印象だった。壮大なスケールに圧倒される『MY HEART DRAWS A DREAM』を始め、その他も1曲1曲のパワーを感じる。他には『heavenly』とか『True』がバラエティ色の強いアルバムであるが、えばぁの中ではこの2枚も『SMILE』もあまり高い評価ではないので、相対的に『KISS』の評価は上である。いいアルバムだと思う。
 ただし、どっちかって言ったら、統一感があるアルバムのほうが好きなのだった。 『REAL』と『AWAKE』はいいアルバムだと思ってますよ、ええ、ええ。(*1) 次はまたまとまったタイプのアルバムかなぁ。

*1 『REAL』は曲も詞も当時の状況も何から何までトゲトゲしさに溢れ、『AWAKE』はかなり反戦寄りの思想が伺えるため、どちらもアンチの多いアルバム。

No. TITLE words : music :
 COMMENT
1 SEVENTH HEAVEN words : hyde music : hyde
 29thシングル。
2 Pretty girl words : ken music : ken
 kenの作詞作曲。暗い曲ばかり書いて「これはいかん」と思って作った曲で、詞は2時間ほどで書き終えたものだという。メンバー3人が衝撃を受けた言葉の連発である。「だぜ」とか。詞はイケイケ、曲もイケイケで、もうどうなっちゃったっていいやくらいの気持ち。だって夢の中なんだから。
 別にラルクファンではないが、ふと聞いた『Feeling Fine』を「いい曲だね」とえばぁに言った友人は、やはりと言うか何と言うか、この曲も好きらしい。
3 MY HEART DRAWS A DREAM words : hyde music : ken
 30thシングル。
4 砂時計 words : tetsu music : tetsu
 tetsuの作詞作曲。hydeが『AWAKE』のときに「詞の世界観はバンド全体で共有したい」と言っていたが、これと『spiral』が上がってきたのは、hyde発言に対するtetsuとyukihiroの答えにも思える。kenはマイペースだし、前回『twinkle, twinkle』でやっていたと思えば。
 tetsuはパンク精神溢れる一方で、何かとバランスを気にする性格である。自らが行動すれば誰かのバランスが崩れる、自分にとって良いことでも他人にとっては悪いことかもしれない、そのことを砂時計に例えてこの詞は書かれている。非常にtetsuらしい詞、tetsuの一面そのものみたいな詞で、ある雑誌のインタビューに『(詞には)知ってる言葉しか使わない』と言っていたのもよくわかる。
 イントロから最後まで、厳粛な雰囲気のある曲。作曲者は違うけど、『fate』のような。
5 spiral words : yukihiro music : yukihiro
 yukihiroの作詞作曲で、詞はついに全てが日本語になった。『螺旋』の意。
 yukihiro本人にはレイヴパーティーの、ただただ本能で踊り狂うイメージがあったらしい。その一方で、『螺旋』と言う言葉からは「DNAの螺旋構造」と言う言葉を思い起こし、ヒトと言う種のイメージをも含んでいそうである。そして「ユッキーの曲からは初期衝動を感じる」とhydeがコメントしていたが、hydeの歌からも『DAYBREAK'S BELL』とはまた違った初期の頃を感じる。諸々含めてカッコいい曲だ。
6 ALONE EN LA VIDA words : hyde music : ken
 落ち着いた、異国風の曲。タイトルはスペイン語で『孤独な人生』の意らしい。
 この曲に近い風景を思い浮かべる曲といえば『Wind of Gold』だが、重いものを引きずっているような『Wind of Gold』に比べ、本曲は重いものを"背負っている"感じである。どちらの風景がいいと思うか、優っていると思うかは人それぞれの感じ方だろうが、えばぁはこの曲を、15年続けてきたからこその厚みを感じさせる曲だなぁと思った。
7 DAYBREAK'S BELL words : hyde music : ken
 31stシングル。
8 海辺 words : hyde music : tetsu
 『Fare Well』のようなピアノのイントロで始まる。曲も詞も、ほとんど『SMILE』のときに作ってあったそうで、詞は特にその頃っぽい。
 「Bメロが大事」(*1)と語るtetsuの曲だが、この曲はそもそもBメロがなく(笑)、Aメロの次はすぐサビを迎える。案外淡々とした進行で、間奏後の一瞬が盛り上がる。この曲が『SMILE』に入らなかった理由は、その当時1曲しか書いてこなかったhydeの『永遠』の構成が、本曲とだぶるからだと思っている。えばぁは『海辺』のほうが好きだ。

*1 ページ中段くらい。

9 THE BLACK ROSE words : hyde music : hyde
 事件現場に残された『黒薔薇』を巡る、サスペンス調の詞。物語的には主人公でない人間の立場から描いていて、最後には「おまえも殺されるんかい!」と言うところが『C'est La Vie』同様、とてもhydeらしい。
 今までからすると不思議な詞であると同様に、曲も「不思議」(yukihiro談)である。(*1) せっかちなのはとてもhydeらしく、それでもかっこよく収まっているのはこれまたhydeらしい。とにかくhydeらしさに溢れる曲なのである。こうしか言いようがない(笑)

*1 『Killing Me』リリース前のインタビューによると、hydeが自分でいいなと思った曲は回りに理解されづらいらしい。その際tetsuが「俺はわかったよ」と引き合いに出していたHYDEソロの『HELLO』も、tetsuの言いたいことはわかるが、言われてみればえばぁも変な曲だと思う。

10 Link - KISS Mix - words : hyde music : tetsu
 28thシングル。アルバムでは『KISS Mix』として収録され、ボーカルを録り直し(*1)、アレンジがちょっと変わり、最後はフェードアウトでなく、LIVE同様の終わり方をする。

*1 アルバムクレジットに「Vocal treatment : Hajime Okano」とある。ボーカル録り直しがあったかどうかはわからないが、少なくとも調整はされている。

11 雪の足跡 words : hyde music : ken
 イントロは鐘の音で、そのあとオルガンの演奏と共に歌いだすバラード。kenは『素朴』をイメージして書いたと言う。えばぁは、教会を出た2人がその後家路を辿る様子を描いたようなイメージで捉えているが、間違って『フランダースの犬』を思い出したことがあり、とんでもなく哀しい気持ちになってしまったことがある。本当は温かい歌です。
 ただその一方で、全体的にもうちょっと抑え目でもいいかなとも思った。単にえばぁがバラードに厳しいだけなのだが。
12 Hurry Xmas words : hyde music : hyde
 32ndシングル。