AWAKE

 2005年6月22日発売。通算10枚目のオリジナルアルバム。オリコン初登場1位。

 タイトルの意は「目覚める」「覚醒する」。意図的かどうかはともかく、統一感のあるアルバムに仕上がっている。詞的なものが大きいか。hydeの曲が多く(5.5曲)、ken(4曲)が続き、tetsu(2曲)とyukihiro(0.5曲)は控えめ。
 この『AWAKE』について、hydeは詞について聞かれると「Love&Peace」とよく言っていたが、この言葉も本人の意図するイメージとはまたちょっと違う感じだと言う。「Love&Peace」と口にするのは簡単だけれど、現実の世界は違うんだと言うところに目を向けて欲しいのかなと思う。
 お勧めアルバム曲は、一つ選ぶなら『LOST HEAVEN』。・・・と言うか、全部いい。

No. TITLE words : music :
 COMMENT
1 New World words : yukihiro music : hyde & yukihiro
 『SINGLES』にて。
2 LOST HEAVEN words : hyde music : ken
 劇場版『鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』エンディングテーマ。既発表であっても、c/wで『Link』にくっつけて置けばよかったのに・・・と思うくらいオススメのかっこいい曲。アルバム曲では一番好き。
 詞は、作品全体から受ける感じを描いたとのこと。あらすじしか知らない人間の言うことだが、「Heaven」「楽園」と言うのは、作品で言えば『母親を生き返らせること』だと思われる。でもそれは叶わない・・・と言うところでやるせなさを感じさせる部分もあるが、同時に、次の目的や今出来ることに価値を見出しているようにも読める。
 この点は、なんとなくhydeの詞にも見受けられる。最近は『眠りによせて』『Cradle』のような非現実的・幻想的な世界を描く詞は多くない。現実を見据えた詞(今回は『反戦』)になってきていると思う。「憧れを抱くのも悪くないけれど、今は現実を見つめようかな」と言う心境を映画に重ねた部分もあるんじゃないかなぁと、えばぁは思っている。今後どうなるかはわからないが。
3 叙情詩 words : hyde music : ken
 『SINGLES』にて。
4 TRUST words : hyde music : tetsu
 アルバム曲では、tetsuはこの1曲のみ。えばぁはメロがヒットだと思った。サビは少し重たい感じがして(『Come into the light〜』のところ)ちょっと。でも相当メロがよく感じたので評価高し。
 この詞の主人公は、命を失う寸前だと思う。風景は水辺なのだが、それを踏まえると、この主人公はオフィーリアなのでは、と思った。要するに、この詞は『Ophelia』(10曲目)と対を成しているのでは、と考える。『Ophelia』はハムレットからの視点だが、『TRUST』は争いに巻き込まれ狂ったまま死を迎えたオフィーリアの視点、という感じ。オフィーリアについては『Ophelia』のレビューで。
5 Killing Me words : hyde music : hyde
 『SINGLES』にて。
6 AS ONE words : hyde music : hyde
 「いつもはyukihiroの役だけど、今回hydeがやりました」的に捉えている。そう言う決め付けもいけないとは思うが。激しい曲だが耳に入りやすい。ただ単にえばぁの好みであると言うだけかもしれないが。
 as oneで、「みんないっしょに」の意。『Why can't we just live as one?』で「どうして俺たちは、共に生きるというただそれだけのことが出来ないのか?」。もっと進めば「どうして争ってばかりなのか?」と言うこと。
7 My Dear words : hyde music : hyde
 とにかく今まで聴いたことのない、優しい、素の声で歌いだしたのが衝撃的だった。yukihiro曰く「アルバムのキモ」だそうだが、まさにそう思う。hydeソロ用の曲を引っ張り出したそうだが、もしソロでやっていたらこんなに光のある曲になったような気はしない。今のラルクでこそ生まれた曲だなぁと思った。
 誰を相手にしているのか、と言うのは、身内であったり、ファンであったりと、不特定多数にしておいていいと思う。詞は、とにかく読んでください。
8 EXISTENCE words : hyde music : ken
 「存在」の意。寝られないことを歌っている詞だが、曲は至って激しい。メロのほうは寝られなくてイライラしている感じも出ていると思うが。
 難解。明らかなのは、「ただ寝られないことを描いた詞ではない」ということ。「寝られない」と言うことがどういうことなのかと言うわけだが、えばぁは「寝られない=争いを止められない」と言うことだと考えた。なので、「寝たいんだけど悪魔が邪魔して寝かせてくれない」のは、「争いを止めたいけど、悪魔が邪魔して止めさせてくれない」ことだと思う。そう言う悪魔が、人間の心の中には「存在」してるんだよ、と。
 ・・・なんて思っていたのだが、曲中に『So why don't you just stay awake?』が2回出てくるのがまた引っかかる。1回目(間奏ラスト)は「どうして起きたままでいようとしない?」=「どうして争いを止めようとする?」という意味だが、2回目(曲ラスト)「(争いは愚かだとわかりきってるのに)どうしてそれに気付こうとしない?」に思える。ただ、()内は妄想なのが問題だが(笑)
9 自由への招待 words : hyde music : tetsu
 『SINGLES』にて。
10 Ophelia words : hyde music : hyde
 hydeソロ用の曲をラルクアレンジ。だが、『My Dear』と違いこちらはソロの趣きたっぷり。初聴きでは「浮いてる」「(Shining over youに)そのまんま」と思ったものだが、なんだか引きずり込まれてきた。
 タイトルは『ハムレット』に登場するハムレットの婚約者・オフィーリアのこと。『TRUST』で述べた通り、こちらはハムレットの視点だと思う。オフィーリアが死を迎える情景には、過去何人もの画家が絵心をくすぐられ、何枚も画があるらしい。「争い」について考えたとき、hydeの頭の中に、争いに翻弄され死んでいったオフィーリアの画が浮かんだのだろうか。
11 星空 words : hyde music : hyde
 このアルバムの「hyde的総括」。インタビューでhydeは「空は何も答えてくれない。ただそこにあるばかり、ですね。」と答えていた。しかし何も答えてくれないけれど、何か願いを込めたくなる。この詞は、争いによって全て失った者(個人的には「少年」が浮かぶ)の、死の情景・願いが描かれている。次の目覚め、つまり次の生では、争いのない世界であったらいいな・・・と。
12 twinkle, twinkle words : ken music : ken
 「キラキラ星」とでも訳すのが妥当と思う。
 これまで10曲、ずーっとhydeワールドが展開されてきて、最後が『星空』でこれまた悲しい終わり方をする。結局あの少年は、願いを込めつつ、命を失うわけだから。今生では争いをモロに受けてしまったわけだし。
 ・・・と言うhydeワールドに対する、kenの返事、提示、励まし、そう言う意味があると思う、この詞と曲には。視覚的に言えば、『星空』の少年の隣に、『twinkle〜』を歌う別の少年がまたいるんだと言うこと。実際はそれが、hydeの周りにいるkenとかtetsuとかyukihiroであり、サポートの人たちであり、ファンであると。hydeワールドに対するkenなりの答えであると同時に、そう言う周りの人たちに対する感謝の気持ちも表してるのだと、えばぁは思っている。